第３０話 経済の専門家もよくわからないタクシー業界

皆さん、随分ご無沙汰してました。

実は、今回は、ある方から、「タクシーについての質問」を多数の項目に渡り頂きました。おおまかに紹介すると、「何故、近距離で乗ると嫌な顔する運転手が多いか？」や、「タクシー料金値上げすると聞いたが、自由化すると安くなる筈なのに、何故逆行するか？」などです。

私（運ちゃん）なども、他の業界のことなどは、中々よく分からない面が多く、業界にいないと理解できない面が多くありますが、タクシードライバーではない皆さんも、きっとタクシーに関して、何故？が多くあると思います。そこで、これからは、タクシーに乗ってこられたお客さんの話は、勿論、追々この業界の一般の方の知らない事情も紹介していきたいと思います。

さて、タクシー業界は、私（運ちゃん）から見ると実に不思議な所です。今は何処も、皆さんのお住まいの最寄り駅には、タクシーが多数並んでいると思いますが、何故、他の業界なら、効率を重視するのに、一見無駄な事がまかり通っているかということなどですが、「タクシー業界は、他の業界に較べて、人的、物的投資した責任を経営者が殆ど負わなくて済む業界」だからです。

こう切り出すと、必ず「そんなことはない！！」と否定される方が出て来られるのですが、タクシーが駅に並んでいる事自体、普通の資本家にとっては、我慢のできないはずなのに、タクシー経営者は駅にタクシーが長時間並ぶのを承知で車を増やしているのが事実なのです。

ケーキ屋さんで、毎日500個しか、いちごケーキが売れないのに、一万個作ってしまったということ自体が普通は考えられない事ですが、タクシーの場合は、将に其の状態で、売れない（売り上げが上がらない）状態だとしても、運転手の時給の増減を実施すれば、辻褄を合わせることができるので、過剰供給していても問題ないのです。また、最低賃金も守られているようで、守らなくてもよい方法を取っているので、一時間待ちのタクシー運転手が、ワンメーターのお客さんを乗せると、時給は約300円ということになり、正直小学生のお菓子代以下になるので、「口を訊きたくない」という運転手ばかりになるというのが現状です。

そういう訳で、近くても嫌な顔されないタクシー会社を探そうとする方も多いですが、実際のところは、歩合給制の運転手で「嫌だ」と思わない運転手は、皆無です。運ちゃんの知っている会社では、モニター（そこの系列会社の社員が、お客に変装して、接客態度を調べる調査員）を抱えている会社もあるのですが、これなどは、処罰をちらつかせて、「時給300円で満足しろ！！」と脅迫しているのに近い行為だと、運ちゃんは感じており、やっぱり歩合給制を禁止した上で、つまり過剰投資すれば、経営者があたりまえのごとく、損をするようなフェアな状況に持って行かないと、この業界は良くならないと思います。

次に歩合給が無くならない訳は、運ちゃんが思うのには、「歩合給をなくすと、会社が儲からなくなり、政治献金が議員さんに入らない」というのが一つと。「社会の失業者を受け皿にすれば、失業者率は下がるし、生活保護受給者を減らす事ができる」という一石二鳥を狙っているからだと思います。こういう観点から行くと、需要がないのに、過大な供給ができる、この業界は実に重宝だということが言えると思います。「ま、手取り10万位の正社員増やして、何が嬉しいのか？」と運ちゃんは思いますがね。

今回はこれまで。