第３１話 歩合給制の廃止の効果

前回、タクシー運転手側からのタクシー業界事情を語らせていただきました。

要約すると、「需要がないのに経営者は過剰の物的、人的資本を投下しても、損失は歩合給という形で運転手側にリスク転嫁できる」というものでした。しかし、中には、「規制緩和後にタクシーが安くなった。」とか、「様々な決済システムが完備されてきたから、他の業界と同じ自由競争だ。」など主張する方も居ます。

しかし、運ちゃんの方から見ますと、スーパーマーケットなどの小売業界では、商品の質・価格などが消費者に有利になるべく自由競争を行われた背景には、「大量購入一括仕入れによるコストダウン、物流の見直し、ＰＯＳシステムなどでの業務効率化と、従業員の接客態度向上」などの合理化や差別化の上に為し得た賜物であるということです。

ところがタクシーはどうでしょうか？スーパーマーケットなどとは反対に、「無駄なタクシーが道路を占拠して、利用者を乗せて走るよりも、駐車の際の燃料消費の方が多いのではないか？」と疑うほど、効率悪く、将に合理化の反対を行っています。それなのに、価格を安くしたり、サービス向上が見込まれる事自体が、辻褄の合わない矛盾した話で、これは経営者サイドの社会向けの単なるパフォーマンスであるといえます。とにかく、合理化ができないのに、サービスが良くなる理屈は成り立たないでしょう。

もし、日本のタクシー業界で、歩合給制が禁止されたと仮定するとどうなるでしょう？そうなったら、駅待ちの暇しているタクシーを抱えている経営者は大変です。もう事務所であぐらを掻いていられなくなります。

「どうしよう！！ひなたぼっこしている、うちのドライバーに固定給を出さなければならない。確なる上は、お客さんの新規開拓と、今の所は、この地域の需要があるレベルまでタクシー台数を減らす合理化をしなければ駄目だ。」「なるべく一台のタクシーを回転させるしかない」「居酒屋などの経営を始めて、系列居酒屋のお客さんの帰りのタクシー代割引などの、相乗効果を狙う経営をしないと駄目だ。」「ビジネスホテルの経営と、タクシー事業を結びつけよう！！」などの合理化競争が起きます。

また、運転手サイドも、「固定給だから、近いとか遠いとか関係ない。それよりも会社が潰れると、安定した固定給が手に入らなくなる！！接客サービスをしっかりしないといけないな。本日の天気予報や、スポーツなどの結果を知らないと駄目だな。うまいラーメン屋を教えてくれと言われたら、うちの系列のラーメン屋を紹介しよう」など、これもまた、経営者と一体となっての、利用者至上主義のサービスが展開されていくことになります。

こうして見ると、タクシーの歩合給制は、タクシー利用者の方へのサービスを阻害している最大要因と見てよいと思います。歩合給制で、会社がいくら指導しても、「近いお客さんで時給300円」を嫌がらないようにはならないわけで、固定給制で、会社側が責任をもって、その地域での需要と供給と自社サービスのバランスにより、運転手の数と、タクシーの台数を決めるべきだと運ちゃんは思います。もちろん、合理化により、半数以上の運転手は、不必要ということになると思いますが、お金を払う利用者を、「余りにも軽く見る業界」を変えて行く為には、止むを得ないと考えています。

★ご意見の方を、国土交通省で受け付けているようです。運ちゃんは、歩合給なのに会社に強要されて笑顔を作るようなタクシーでなく、タクシー会社主導の遠慮なく乗れる、サービス満点のタクシーになるように希望したいです。